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最後のプレゼント

Coulyne

子供の頃から、なぜか私は、蜩 ( ひぐらし ) の鳴き声が本当に好きで、半分本気で、「 私はね、ひぐらしの鳴き声を聞きながらご臨終だったら、どんなにいいかと思うよ 」 などと、みんなに言っていたくらいです。 しかしその計画を、私より先に実行したのは息子でした。 亡骸になって、病院から自宅に運ぶ途中の峠道でも、葬儀場の裏山からも、ひぐらしの カナカナカナという鳴き声が聞こえていたので、それ以来、あれは私への最後のプレゼントとして、たくさん聞かせてくれたんだと思っていました。 息子の一周忌が近くなり、数日前からお花が、少しずつ届き始めていたのですが、その中に、敦子の誕生を祝うお花が一つありました。添えられたカードに、「 息子さんからの、最後のプレゼントでもある、敦子ちゃんがすくすく育ちますように 」 と書いてあり、思わず涙ぐんだのですが、確かにそうかもしれないと思いました。 息子が亡くなった七月は、本来は暗く沈みがちになるはずなのに、敦子の誕生月でもあるので、そうそう沈んでもいられません。そしてそれはこれから一生続くことなのです。 また、私たち家族だけでなく、お線香を上げに来て下さった方も、敦子を見て、何だか明るくなってお帰りになります。 そうか、息子はこういうやり方が好きだったな、と思いました。 「 もう悲しむのはやめにして、敦子の顔でも見て、笑って帰っていって下さいね 」 こんなことを言っているような気がまします。 今日は初めて迎える悲しい命日の日ですが、あどけない敦子に、みんなが救われています。 本当に、最後のプレゼントだったのかもしれません。

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