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  • Coulyne

タンス

私の整理タンスは、買ってからもう35年が過ぎました。 何度も引っ越しをしたのにどこも傷まずに、今も当時と変わらない姿をしているのですが、それはある意味すごいことだと思うのです。 このタンスは私が亡くなってからも、そんなことは自分には全く関係のないような顔をして存在していくのでしょう。 そういえば、実家には30年近く前に亡くなった祖母が嫁に来るときに持ってきた桐のタンスがまだあり、当然ながら母が嫁に来るときに持ってきたタンスも、いくつか使用中なのです。 日本では人が亡くなると、残された近親者が、故人のタンスを前にして、遺品の整理をしたり、形見わけをしたりします。 引き出しを開けながら「ああ、この着物、お母さんが私の結婚式に着ていた物よ。」なんて言いながら、みんなで賑やにするのは、長生きをしたおばあちゃんのタンス。 なかには、「今年はちょうどよい大きさだったのに。」などと言いながら、遺品の整理をされる、ペタペタとシールの貼られた子供のタンスもあることでしょう。 我が子の産着を入れた引き出しに、介護をされるための肌着をしまう日もやってくるのが人生です。 洗濯したての衣類を引き出しにしまいながら、タンスを買った当時の衣類などは、ただの一枚もないことに今更ながら気がついて、こんなところにも人生があることを知りました。 何十年か先の私の遺品整理は、このタンスの前で「あらやだ、こんな服までとってあるよ。」なんて言いながら、みんなで賑やかにやってもらえたらいいなとふと思いました。

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